地域・学校と連携した避難所開設初動マニュアルの整備と避難所開設訓練の実施
- 内山琴絵(教育学部 特任助教)
- 2024/07/02
1.本研究の目的
本研究では,地震発生時の避難所となる地域の小学校において,地域住民・学校・大学等が連携して避難所開設マニュアルを整備し,その訓練を実際に行うことを通して,地域における防災コア人材育成を試行することを目的としている。さらにこの活動の成果について,報告会を開催し発表することで,マニュアルへのフィードバックを行い,さらに地域・社会とのネットワーク強化・情報共有に繋げるものである。
2.実施内容
本研究の実施にあたり,通年でワークショップ形式による研修会を開催した。およそ月に1回,地区住民が集まり,避難所開設期の対応について話し合いや現地確認を行いながら,マニュアル整備を進めた。さらに,地震発生時の避難所となる小学校において2回の実践的な開設訓練を行い,マニュアルへのフィードバックを行った。具体的には,以下のプログラムを考案・試行した。
6月~9月:ワークショップの開催(参加者が災害対応,避難所開設期の基礎知識について学習)
7月:避難所となる小学校の体育館見学,資機材の配置や数について確認
10月中旬:中間報告会の開催
9月~3月:避難所開設マニュアルの整備,検討
10月および1月:地震発生時の避難所となる小学校にて避難所開設訓練の実施(2回)
11月~3月:訓練の反省をふまえたマニュアルの修正
3月:成果報告会の開催
3.本研究の成果
参加者の募集にあたり,防災コア人材となりうる地域住民を選定する必要がある。そこで区長等の役職者に依頼する形ではなく,防災に関心が高く日頃から地域活動に取り組んでいる住民に手挙げ式で参加していただいた。実際の参加者は,区長や防災指導員のほか,中学生,大学生,女性,事業者,周辺自治会役員など多様な属性となり,積極的な姿勢で取組みを進めることが出来た。
また,発災直後から避難所開設,初期運営のフェーズにおいては,外部からの支援が受けにくい段階であるため,地域住民主体の対応が必要となる。そのため,本研究で考案したプログラムによって,避難所開設段階の対応ができる体制づくりに向けた提案をすることが出来た。このことは,平時から地域防災に取り組む仕組みとなり,さらに今後地域にとって防災コア人材の育成につながるものである。実際に,上記内容以外にも,地区住民が自主的に集まって勉強会開催や防災倉庫の点検実施をするなど,住民主体による積極的な取組みが見られた。これによってさらに今後の継続的な活動につながることが期待される。
4.今後の課題
避難所開設マニュアルの整備の次の段階として,避難所運営,被災者生活再建支援等の次のフェーズの課題に取り組む必要がある。これによって,災害発生から復興までの体系的な事前の対策を進めることが出来る。また,当該地区内には,炊き出し支援やペット防災,災害時の子ども支援など防災活動を行う様々な団体が存在する。そのため,防災人材とそれら団体が連携を深めることで,地区内の防災ネットワーク構築を行うことも今後の課題である。
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その他の研究成果