信州大学
開催終了 地域防災減災センター

【活動報告】平成30年7月豪雨により岐阜県内で発生した土砂災害調査

開催日:平成30年8月27日(月)

開催場所:岐阜県下呂市周辺

平松防災減災研究部門長が、平成30年7月豪雨により岐阜県内で発生した土砂災害の調査を行いました

【活動報告】平成30年7月豪雨により岐阜県内で発生した土砂災害調査
開催日時平成30年8月27日(月)
開催場所岐阜県下呂市周辺

平成30年7月豪雨により岐阜県内で発生した土砂災害調査
信州大学地域防災減災センター研究部門 平松晋也

信州大学地域防災減災センター研究部門では,平成30年7月豪雨により岐阜県下呂市周辺で発生した土砂災害を対象として,8月27日に,日本地すべり学会中部支部及び地盤工学会中部支部と合同で災害調査を実施した。調査対象箇所は,図-1に示す3箇所である。
写真-1に示す金子谷では,崩壊土砂の流下とともに土石流化し,土石流はJR高山線とその下流の人家にまで到達したため,JRの運休が余儀なくされるとともに家屋被害が発生した。渓岸斜面を洗掘しながら発達した土石流には多量の流木が混入し,堆積土砂量は全体で7,000m3程度にも上った。ここでは,金子谷を例として,その災害概要を報告するとともに,今後の課題を示した。
 崖錐堆積物が2層になっている事実より,金子谷では過去に今回と同程度の土砂移動があったものと推察される。また,渓流内の侵食深は4~-5 m 程度であり,河床の侵食が激しい状況であった。
一般的な表層崩壊は集水性を有する0次谷で発生するのに対し,金子谷で発生した崩壊の源頭部は流域の最上流部付近であり,並行型斜面であった(写真-1)。この事実より,今回の崩壊の主要因は高降雨強度の降雨が与えられたことによる地下水位上昇であると考えられる。金子谷では治山構造物が完成したばかりであったが,写真-1~2に示すように今回の土石流ですべて破壊されてしまった。
治山の構造物と砂防の構造物とではその設置目的が異なるため,同じ構造形態であっても強度が異なるといった事実を再認識する必要がある。しかし,住民からみると同じ形をした構造物であるため,当該堰堤が治山目的であるのか砂防目的であるのかを区別するのは極めて困難である。このため,治山・砂防などの管轄を越えて,斜面上方から下方まで一貫したシステムとしての流域管理の実現が急務となろう。また,崩壊の発生場所や発生時間を事前に予測することには限界があるため,気象庁などで発表される降雨情報を有効に活用した個々の地域に対応した警戒・避難システムなどを早急に構築するとともに,住民の方々には防災意識をより強く持ってもらうための仕掛けや取り組みが必要となろう。

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