信州大学

Swarm Planning, Design Scienceを用いた防災と環境教育の両立に関する実証研究

  • 上原 三知(農学部 教授)
  • 2024/06/10
Swarm Planningは、COCDにより開発された対立意見を活用する手法で、ロブ・ロゲマ氏によって提案され、発展されたプロセスです。本研究では、東日本大震災の復興課題に適用し、防災と環境保全の両立を目指した議論と計画を促進しました。Swarm Planningを採用したチームは包括的な議論を展開し、リラックスした状態での参加が示されました。結果として、Swarm Planningを用いた復興計画案は高く評価され、防災と環境保全のバランスを取った革新的なアプローチを示唆しました。

 

目的:Swarm Planningは、1977年にフランスのCOCD (Center for Development of Creative Thinking)が開発した対立意見を活用したダイヤグラムおよび,粘土を用いて難しい課題を想像的に計画するオランダのロブ・ロゲマ氏が提案し、さらに発展させたプロセスです。類似するものとして、Design Scienceと呼ばれるアメリカのバックミンスター・フラーが提唱し、イアン・マクハーグがさらに発展させ、異なる科学的評価を統合した創造的なプロセスです。

計画:本研究では、東日本大震災の復興課題に上記の手法を活用し、防災意識と地域環境の保全の両方に意識を向けた創造的な議論、合意形成の可能性を検証しました。災害復興における防災と環境保全という対立しやすい視点を調和させる議論や計画が誘発されるか調べました。対立意見を超えた総合的な計画方針を促進するSwarm Planningと、従来の二分法的な空間計画との議論や提案内容の違いを比較しています。Swarm Planning を採用した 2 チームは、住宅、堤防、災害復旧のその他の側面などの重要な問題についてCOCD BOX シートを用いて弁証法的な議論を行い、視覚化のためにカラー粘土を使用しました。従来の二分法的な2チームは、シートと粘土を利用せず、同じテーマを議論し、提案を行いました。4つのチームは、事前のストレスレベルや、浸水した住宅の集約移転、大規模な防潮堤の再建、埋め立て工事などの被災地で対立する課題に対する意見が平等に分布するように編成され、実験が行われました。40 分間のワークショップの中で、これらのチームは同じ時間で、同様の問題について話し合い、魅力的な復興計画を提案する任務を負っていました。 ワークショップの有効性は、ワークショップ前、ワークショップ中、ワークショップ後の心拍数測定、会話分析、提案された復興計画の評価という 3 つの視点から比較分析されました。

結果:  会話分析から、Swarm Planningを使用したチームはワークショップ全体を通じて、特に住宅の移転や防潮堤などの賛否を超えたより発展的で包括的な議論を行ったことがわかりました。対照的に、二分法的な議論のチームの発言は賛成と反対意見が交互に出され、発言数も経過とともに減少しました。 心拍数データは、ディスカッション中にSwarm Planning グループの参加者がよりリラックスした状態にあったことを示し、その状態はワークショップ終了後も続いていました。加えて復興計画の評価により、Swarm Planningプロセスを通じて合意提案された計画案が、居住性、独自性、安全性の点で統計的に有意に高く評価されました。この評価は、総合的でバランスの取れた革新的な災害復旧計画を作成し、防災と環境保全の目標の間のギャップを埋めるSwarm Planningの有効性を指示しました。


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