信州大学

繊維製品の生産体験を生かした子どもの環境配慮マインド育成

  • 福田典子(教育学部 准教授)
  • 2024/06/28
本研究は、衣食住の生活材の生産が家庭内で行われる時代から、家庭内の仕事が社会化し、子どもの衣生活も大きく変化している現状を調査しています。特に衣類の生産と消費の環境問題に焦点を当て、リメイク活動を通じて子どもたちに環境配慮の重要性を学ばせることを目的としています。具体的には、附属小中学校での古着リメイクプロジェクトを実施し、効果と課題を明らかにしました。将来の社会担い手としての環境配慮意識の育成を目指す教育上の取り組みが示唆されています。

■研究概要

衣食住の生活材の生産を家族の営みとしていた時代から,時代は著しく変化し多くの家庭内の仕事の社会化が進行している。さらに子どもたちの衣生活を取り巻く生産・消費環境は大きく変化し,生産体験が少ないだけでなく効率重視の指導法や生産性重視の分業傾向や知識量の再生による評価が学校教育にも影響を与え,効率や再生に特化した知識としての記憶量が,実際の生活の場で最適な選択や判断をするための知識技能に繋がっていないと問題視されている。アパレル業界の商品である衣類は,大量生産と廃棄焼却処分される衣類の増加量や海外縫製が多いため衣類の輸入率が98%を超えることや海洋へのマイクロプラスチック流出の問題など,消費者にあまり認知されていない深刻な課題が多い。衣類の手入れや1着の利活用期間を長命化に加えて,利用者替えや利用方法替え等の多様な方法で循環化を目指す態度形成やそれに関する知識が技能を育成する必要が模索されている。

小中家庭科衣生活領域ではこれまでに,着用・手入れ・製作を主な内容として指導してきたが,今後はSDGs観点を積極的に導入し,しかも実践的な生産体験を多く含む体験的な学びが注目されている。短期再生型の記憶ではなく状況に応じて柔軟に優先順位を変え,総合的な情報を複眼的に評価し整理した中での対処力の育成のための教材や指導デザインが求められている。

本研究では,子どもの古着のリメイク体験により,1本の糸や生地を無駄にしたくないという情動的な記憶は自然に沸き上がり,多くの資源やエネルギーが投入されることを直接的な体験から理解することができると考えた。そこで,附属小中学校において家庭から回収した古着を素材としたリメイクを効果的に体験させる活動について検討した。それらを基に令和5年度は附属長野中学校において,中学生を対象とした実践を行い,その効果と課題を明らかにした。環境問題の対応には,生活者・行政・事業者の連携が不可欠であるとともに,将来の日本国の社会を担う子どものための衣生活の観点からも,環境配慮マインド育成が何よりも重要となる視点は自明のことである。

■成果

本研究では,特に小学校高学年から中学校の5か年の発達段階の子どもたちを対象とした研究チームがそれぞれの専門性を生かし,環境配慮意識を高め児童生徒自身の衣生活を見直し,環境配慮理念やビジョンを醸成できる指導上の取り組みについて検討を行ったが十分な教育効果を確認するまでには至らなかった。しかしながら,➀学校が地域の拠点となりえる可能性を実践の様子から再確認できた。②古着の回収や選定・選別,適切な繊維製品のアップサイクルの決定等についても,児童生徒の繊維製品の生産や消費への関心を高めることや子どもレベルの適切な知識・技術を高める必要があることが明らかとなった。 まずは,最初のだれでもできるアクションとして,そのまま古着を可燃焼却処分することを避け,一人でも多くの児童生徒がボタン,スナップ,ファスナー等の留め具の利活用の重要性に気付き,可燃焼却前に留め具分離行動を引き出す指導も今後検討していく予定である。


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